MIT

made in tokyo

国内縫製工場が無くなる未来

国内の縫製工場は減少しています。国産の服は全体の2%程と言われています。 これはあくまでも生産地としての国産という意味で生地や付属も国産というわけではないです。 減少する理由はたくさんあります。 それは儲かる仕事が少なく工賃が安いので、給料が安くなり、担い手がいないからです。 ざっくり話すとそんな所であります。工賃と昨今の人件費とのバランスはなかなか取りづらいです。 そういう悪循環の上に成り立っているのです。 もしも単純で大量の仕事があれば利益は見込めるかもしれませんが、 そういう仕事は人件費の安い海外で作った方がコストがかからないので国内の縫製工場には滅多に流れては来ません。 ではどんな仕事が国内に流れているかというと、小ロットで複雑な仕事になります。 小ロットの量産でその上複雑な仕事となると工賃もそれなりに高くはなりますが、 難しい仕事に変わりはないので効率は悪く利益は出づらいものです。 なんとか効率のいい方法を考え出してもロットが少量なのでペースが乗って来る頃にはその量産の仕事は終わってしまいます。 効率の良い方法を考えることに時間をかけた事自体が無駄になります。 結果、利益を見込めるかは難しくなります。利益がでなければ従業員の給料を上げるのは至難です。 給料が安く、待遇が上がる見込みも少なければ、人材が集まらないのはごく自然なことでしょう。 それでも服を作るという仕事に魅力を感じてくれる若者はいますし、今後もいると思います。 ですが今の縫製職の待遇で長く続けられるかは簡単ではありません。 そうなるとやっぱり担い手がいなくなってしまいます。 国内の縫製工場では今の代で終わってしまうだろう工場は少なくはないです。 人件費の高騰から首都圏では最低賃金でも歯車が合わなくなってきています。 地方だとしても人件費が合っているとは言い難く小規模の工場では次の世代につなげるのは簡単ではないです。 地域に雇用を提供し地場に密着してるような大規模な工場であれば担い手は存在するでしょうが決してこの先待遇が良くなる予感はないのが現実であります。 どこの縫製工場も今いる従業員ですでに高齢化状態なので担い手がいなければ今の代でたたむことになります。 およそ5年〜10年で国内の縫製工場数は激減することになります。

もしも服が高く売れるようになれば工賃も高くなるかもしれないですが、服が高く売れることは簡単ではないです。 現在、値段の高い服の売れ行きがいいのは事実ですが、その服が利益が期待できるロットであるかというとそうではありません。 では服の値段が変わらないのなら減価率を高く設定すれば工賃を上げることが出来ます。 それは利益を移動させ分配することになります。 原価率を公表しているブランドやエシカルを掲げてるブランドもありますが、もちろんそれも簡単ではないでしょう。 安く作って高く売るというのが資本主義がデザインするビジネスなのです。 ファストファッションと言われる大量生産の衣類はその資本主義の申し子です。 ファストファッションは大量消費のイメージで悪者扱いされることもありますが、 全ての年代層に対してファッションが身近な物になったのは言うまでもなくファストファッションのおかげだと私は思います。 店舗数も多く、気軽に入れて、流行の服を試せるのです。 ファッションに疎い人達にも平等にファッションを供給し底上げしたのです。 この貢献は計り知れないでしょう。大量生産なので世界中に雇用も生み出しました。 ただその裏側は決して、決して黙認されるべきではない現実もあります。 ファストファッションに関して話し始めると脱線しますのでこちらに関しましてはまた別の機会にして話を戻します。

今後品質表示や下げ札に日本製と明記される商品はほぼゼロに近くなる未来があります。 ただ根本的なことですが日本製でなければならないということはないです。 どこの国で作られたかというのはイメージだけで品質を保証する物ではありません。 ドメスティックのハイブランドやラグジュアリーブランドであれば国内生産の方が説得力があるかもしれませんが、 海外生産がダメということはありません。商品としての本質に違いはありません。 皆さんがお持ちのお気に入りの服も「日本製」だからお気に入りというわけではないかと思います。

縫製工場が減少していく中で、国内で縫製の技術を知る人や経験のある人は今後減っていきます。 現在殆どのアパレルメーカーに服作りのノウハウはありません。 国内縫製工場に縫製仕様や縫製技術を頼っているアパレルメーカーがほとんどです。 国内縫製工場が無くなれば、アパレルメーカーはその技術を失う事になります。 海外の縫製工場に丸投げしなければならなくなります。 そうならないように自社で縫製工場を持つことや、自社でアトリエなど技術的な部門を持つことで技術やノウハウを保有していく動きもあります。 メーカーはデザインや型紙は作れても縫製仕様の理解力は現場には勝てません。 今までは国内の工場であったから多様な縫製仕様や多彩な縫製技術を共有出来ていました。 そのやりとりを海外工場とでは出来ないとは思いませんが、そう簡単にはいかないでしょう。 今以上に消費者からの商品の付加価値を求めるニーズは高まります。 そういう付加価値のある商品は単純な服ではなく、高い技術力を必要とする仕様や生地が多いです。 まさにファクトリーブランドが得意とするところかと思います。 今後アパレルメーカーにおいては今以上に縫製技術の保有は必須だと思います。 今から5年〜10年で生産環境は激変するのです。

国内の縫製工場が無くなって欲しいなどとは思ってもいないですし、そんな未来は私には受け入れられないです。 答えのないブログになってしまいましたが、今後縫製職はどのような選択をしていくことになるかをまた違う機会で書きたいと思います。 縫製業にかかわらず、製造業全般における国内の問題は根深いです。