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針目が飛ぶ理由

初めに

針目が飛ぶ理由は一つのみです。 沢山あるように思うかもしれませんが、理由は一つのみです。 その理由が起きる現象として沢山の理由がありますが。根本的には一つなのです。 その一つの理由が起きてしまうことに対して沢山の理由があるのです。訳わからない言い方になっていますが。理由は一つなのです。

ミシン目のメカニズム

目飛びを考える前にミシンの縫い目のメカニズムを知る必要があります。 ミシンの天秤が上にある状態では糸はピンと張っていて緩みはありません。 ミシンの天秤が下に下がるタイミングで糸に緩みができます。 緩んで出来た輪っかの部分をカマが引っ掛けて下糸と絡みます。 針目が飛ぶとはこのタイミングで糸に緩みができずにカマが引っ掛けられなかった時に起こります。 針目が飛ぶときは糸に緩みができなかったということになります。

< 天秤が上 >

メカニズム画像

< 天秤が下 >

メカニズム画像

< 天秤が上 >

天秤が上

< 天秤が下 >

天秤が下

針目が飛ぶ理由

もう理解してたと思いますが、針目が飛ぶ理由はドブ板下のカマが上糸を引っ掛けられなかったからです。 理由はこの一つです、この理由が起こる理由に生地の厚みだったり、生地の動きだったり、針の太さや種類だったりがあるのです。 例えば「生地の厚みがあり針目が飛んだ」ではなく「生地の厚みがありカマが上糸を引っ掛けられなくて針目が飛んだ」となるのです。 針目が飛ぶ理由は生地の厚みではなくカマが上糸を引っ掛けられなかったからなのです。 逆を言えば生地の厚みがあってもカマが上糸を引っ掛けられれば目飛びはしません。 何度も言いますが、針目が飛ぶ理由は生地の厚みではなくカマが上糸を引っ掛けられなかったからなのです。 他には「針の太さが合ってなくてカマが上糸を引っ掛けられなくて針目が飛ぶ」。 つまりどんな時もカマが引っ掛けられなかった時に起こるのです。針の太さが合っていなくてもカマが上糸を引っ掛けられれば目飛びはしません。 つまりカマが上糸を引っ掛けられなかった理由は沢山ありますが針目が飛ぶ理由はカマが上糸を拾えなかったからの一択なのです。 「結局一緒じゃないか」と思うかもしれませんが全然違います。この解釈がなければ原因を探ることができません。 それでは目飛びする場合のメカニズムと目飛びしない場合のメカニズムを見て見ましょう。

目飛びする場合

< 針が刺さる前 >

糸に緩みがない

< カマが拾えてない >

カマが引っかからない

< カマが通りすぎる >

カマが通り過ぎる

このように糸に緩みがつくれないとカマの爪が上糸を引っ掛けられないで空回りします。空回り=目飛びとなります。 次は目飛びしない場合を見てみましょう。

目飛びしない場合

< 針が刺さる前 >

糸に緩みがある

< カマで上糸を引っ掛ける >

カマが引っかからない

< カマに引っ掛かけたまま >

カマが通り過ぎる

カマの爪が上糸を引っ掛けることができています。これであれば目は飛びません。 原因が見えてきたかと思います。

上糸の緩みの消失

例えば、生地の厚みがある所で目が飛ぶのはどんな理由でしょうか?考えてみましょう。 生地の厚みがある所で針目が飛ぶのは厚みが主な原因ではなく生地が重なることによってできる層の間に生まれる空間のせいです。 生地が何枚重なろうとピッタリとくっついていれば大した問題ではありません。 層に空間が生まれるせいで針が刺さる時に生地が浮き沈みします。生地に動きが出てしまうことになります。 針が刺さった後も不安定になり、糸にテンションを与えて緩みを奪ってしまいます。 緩みがなくなればカマが上糸を引っ掛けることができなくなります。

わかりやすく簡単な三つ折りを例に挙げてみます。

< 目飛びしない場合 >

目飛びしない三つ折り

< 目飛びする場合 >

目飛びする三つ折り

生地の層にある空間のせいで糸への摩擦が強くなります。その摩擦が糸にテンションを掛けてしまうのです。

生地の層に空間ができるのは三つ折り以外にもあります。縫い目が交差し縫い代が重なったりする箇所です。 このように極致的に段差の強弱が出ることで押さえの圧力が平均的にかからなくなり生地の層に空間かできてしまいます。 その空間での生地の浮き沈みが糸の緩みを奪います。 他には、生地がニットで伸縮するものであれば厚みがなくてもそれだけで糸にテンションがかかり緩みに影響します。 針が刺さっている間も生地は糸に影響を与えます。なのでどんなにゆっくり踏んでも手で回しても針目は飛びます。 針が刺さっている間の糸は非常に繊細な状態にあります。ほんの少しの変化が糸の緩みに影響するのです。 糸は1本では細くふわふわしていますのでよく考えてみれば単純なことなのです。

カマと針の距離とタイミング

針には窪みがあります。この窪みがカマの通り道になります。カマが糸を引っ掛けやすいように針に窪みがあるのです。 針とカマは出来るだけ近づけた方が糸の緩みの影響を軽減させることになります。糸が引っ掛けやすくなるからです。 ただ近すぎると針に当たり折れます、針からカマが遠すぎても糸を拾えなくなります。 カマの位置の調整はマイナスドライバー1本でできますが安易な調整は危険です。 カマのタイミングがズレてしまうとなかなか大変なことになります。 初めての方はミシン屋さんに依頼した方がいいです。 この調整は針の太さに合わせて行われますが、よほど極端に太い針を使わない限りは針ごとの調整はしなくても大きな問題にはなりません。 目飛びの理由としては通常縫えているのであればこの理由はほとんどありません。 カマと針の位置は目飛びに大きく影響しますのでお話しはしましたが、最近のミシンはとても優秀です。 よほどのことがなければカマの位置がズレることはありません。 ですが知識としてあれば確認することができます。 ミシンを上げるかドブ板を外して針を下ろして針とカマの位置を確認してみましょう。 針の窪みの位置で丁度カマの爪が来ます、その時の距離は紙一枚とされています。

針目が飛んだら考えること

ミシンに特別な問題がなければ考えることは一つです。上糸の緩みがどんな理由で失われているかです。 そしてその理由を探りますが、その理由は星の数ほどとまでは言いませんが沢山あります。 糸の通り道と糸の巻きから糸が上がる際に引っかかっていないか、針先が潰れていれば刺さるタイミングで生地の反動が強くなり、 それだけでも糸の緩みに影響します。この辺りは非常に基本的なことです。 ドブ板の針穴に傷があればそこでテンションを受けて緩みが消失することだってあります。 生地のせいにする前にミシンだけでも理由は沢山存在します。 なので沢山の例を説明し切ることはできませんが、探るべきは糸の緩みの消失の理由です。 それさえわかれば必ず対応できるはずです

終わりに

目飛びはメカニズムがわかっていれば作業工程の中で十分対応出来ます。 例えば目が飛びそうな極致的な厚みのある所に来たら押さえの前の方を指で押さえて押さえが浮かないように押したり、 縫い代が重なっている所ではアイロンの際に強めに潰しておくなどです。 作業の中で生地の重なりの層を出来るだけなくしてあげる努力をしておくのです。 作業中に生地の層のことも意識できるようになれば自然と目飛びは減ります。 私はあまり使ったことはないのですが、目飛びに対応しいる針を紹介します。 窪みの深さで糸を引っ掛けやすくしていて、糸の出口の形状を変えることで針から出た糸の輪っかが出来やすくしているミシン針、 NY2シリーズという針がオルガンより出ています。 これは今回のページでも紹介している糸の緩みが失われない事とカマが引っかかりやすい事の二つを具現化した針かと思います。 参考までに。