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ririファスナーについて

初めに

海外メーカーのファスナーが使用されている服があります。 服だけではなく鞄や財布も同様です。今回紹介するファスナーはその内の一つになります。 これだけははっきり言いますが高いファスナーを使っているから良い商品ということはありません。

riri、リリと呼びます。 スイスのメーカーのファスナーで繊細な見た目で高級な服についていることが多いです。 逆にリリであることでラグジュアリーブランドの証のように思われています。 YKKにもエクセラというハイクラスのものがありますが、 ヨーロッパの生地を使うことが多い国内のプレタブランドではリリの方が圧倒的に使用されています。 デザイン的にもやはりヨーロッパの生地と良く合うと私も思います。

特徴と縫うときに考えること

スライダーにririと刻印があります。

< スライダー >

ririファスナーのスライダー

全てというわけではないのですが、リリファスナーの帯はYKKのファスナーよりも波打ってるものが多いです。 そのまま付けてしまうと身頃も波打つことになります。 しっかりと蒸気を吸わせて波打ちを押さえなければなりません。 これは、どのファスナーに対しても行うべき作業ですが、特にリリは入念に行うべきです。

< 帯の波打ち >

ririファスナーの画像

< アイロンで押さえる >

ririファスナーの帯をアイロン

伸びているというよりはムシの所で詰まっているような感じですね。 上の画像はアイロンで波打ちがおさまっていますがどんなにアイロンをしても落ち着かないくらい波打っている事もあります。

下の画像の様にファスナー周囲をパイピングする仕様がよくあります。 アタッチメントを使用してパイピングをするとファスナーの帯が詰まりやすいです。アイロンで伸ばしてごまかしたりすると見頃につけてから戻ってしまい、 ファスナー箇所のピリつきの原因になります。 リリの場合は逆にその心配はいりません、元々帯が波打っているのでパイピングで詰まると丁度良くなります。

< 周囲パイピング >

ririファスナーの周囲をパイピング

このようにスッキリおさまります。 この仕様をコンシールファスナーでやる場合はファスナーの帯が詰まらないように注意しなければなりません。 なにが言いたいかというとコンシールでは注意しなければならないことがリリでは簡単ということです。 どんなにキレイにコンシールファスナーつけしてもパイピングで詰まったりすれば身頃側に影響してしまいます。 ですがリリでは上の画像のようにとってもスッキリです。リリの良いところを掘り出してみました。

次に縫い手を悩ませるのが長さです。YKKのファスナーとは違い、長さにバラつきがあります。 リリの場合はそのバラつき故にファスナーの長さに合わせて一枚一枚つけなければなりません。 パターンを無視でファスナーの長さ重視です。 パターンよりもファスナーの方が偉いということになります。前代未聞です。 下手すれば仕様書に、このファスナーは長さにバラつきがあるので注意とコメントされていることもあります。 これが付属屋さんへの注意の連絡ではないのがおどろきですが、 それだけリリというファスナーの存在価値が認められているということになります。

検針器問題

我々縫製側からする最大のデメリットは検針器に反応してしまうということです。 検針器に通した際にリリファスナーに反応しているのか、何か金属片が混入しているのか判断出来なくなるのです。 リリファスナーが付いている商品は検針器非対応商品として全てX線検査を受ける事になります。 X線というのは、病院のレントゲン写真のようなものです。 白黒で金属の所のみ黒くなる写真を取り、それを人間が目視で確認するのです。 ハイテクな機器を使ったアナログな検査です。検査工程が追加されますので納品前に大きな手前がかかるわけです。 最近では検針器非対応ではなくても検針後にX線検査を行うメーカーも増えてきました。 それが時代の流れかもしれません。

最新のX線検査機ではAIが人間の代わりに判断するものもあります。 デジタル化は人件費が上がる中で必要不可欠です。

終わりに

服を作る上で色々な付属がありますが、ここまでに存在感を主張する付属も珍しいです。 長さが合わない、納期が遅い、検針器に対応していない、このデメリットを超えて使用され続けることは、 はっきり言って異常だと思います。結局このデミリットを直接受けフォローするのは縫製工場になっているのが現状です。

ヴィンテージの古着などもタロンやスコービルと言ったファスナーがあり、 メーカーや形状でどの年代で作られた商品かを識別したりします。 それだけでその商品の価値が左右される事になります。 ファスナーは商品の価値を消費者にわかりやすく伝える為のツールと言っても過言ではないのかもしれません。 そのようなツールを使わず、本質的な部分のみで服の価値を理解して頂くにはなかなかに難しいのです。