コンシールファスナーの付け方
初めに
コンシールファスナー付けは色々なところで沢山紹介されています。 これから紹介するやり方も基本的なやり方になりますし、紹介もされています。 ですがその作業の中でプレタではどの様なことを考えているかをお話ししながら紹介していきたいと思います。
ファスナーに蒸気を当てムシを起こす
ファスナーを閉めた状態で蒸気を思いっきりかけます。 コンシールファスナーのくせをとってアイロンで真っ直ぐにします。 スライダーを下ろしてしっかりとムシを起こします。
< この時考えていること >
ムシを起こす時にファスナーに変なクセがつかない様に意識。
これは個人的な見解なのですが。 最近のファスナーはどんなにアイロンをしてもムシの部分が反ってしまうものがたまにあります。 そういうファスナーは薄地の商品に使うと綺麗につきません。 ムシが硬いというか厚みがあるというか帯も若干硬さがあるように思います。 同じ色でも柔らかさが違うと思う時があります。考え過ぎかもしれませんが。
印付けは意味ない??
次にファスナーの印付けについてです。 明きの長さが約18〜20c以内で、明きが特別な仕様でなければ、印はしなくてもいいと思います。 糸印であれば推奨しますが、チャコ印というのは点ではなく丸です。 チャコペンが尖っていれば点に近い印が入れられますが、丸というのは印としては目安にしかなりません。 丸の中心が正確な明き止まりになりますが、その丸の中心は目算になります。 丸の上に合わせてしまえばずれることになりますし、丸の下に合わせてもずれることになります。 そもそもファスナー下の明き止まりまでの中縫いは1ミリ以内のズレなく縫えているのか、そしてノッチを正確に捉えられているのか、 どれだけ裁断は正確なのか、その全てで仮に0.5ミリづつずれれば、合計で1.5ミリ合わないことになります。 印は付けても目安として確認しましょう、振り回させれてはいけません。 ファスナー付けが長くなれば誤差が多くなりますので、もちろん印をつけます。 ですがこれもやはり目安として認識しましょう。 最初に18c〜20c以内と言ったのはミシンの台の上における生地の長さが大体それくらいだからです。
上からのファスナー付け
今回は片押さえをメインにして紹介します。まずは普通に上から縫い始めます。 縫い代巾は0.9cか1.0cがいいかと思います。 その巾であればファスナーの帯で縫い代を隠せるようになります。
縫い代には細ロックをかけました。
縫い代巾を揃えるというのはとても重要な事ですが、それを意識し過ぎてはいけません。 必ずしも裁断の時に歪みなく延反されているわけではありませんので、大事なのは地の目の方です。 ファスナー付けは地の目の歪みなく縫うことが自然なシルエットを作ります。 押さえ左側も意識しやすいように今回はわざとファスナー横に中縫いタックを入れてみました。 縫い代巾ばかり気にするとタック線が歪むことになります。
< この時考えていること >
縫い代巾を意識はするがあくまで地の目を自然に保ち、ファスナー横のタック線が真っ直ぐになることを意識して絶対に歪ませない、
さらに表地がファスナーに負けてイサらないように生地を送るということです。
見てる方がわかりやすい様にファスナーの横にタックを入れました。 実際はファスナー横に目安がないことの方が当たり前です。 本来なら何も無い生地に地の目を見つけて確認しながらファスナー付けをします。 押さえ右側の縫い代巾も押さえ左側の本体の地の目も意識しましょう。
縫い進めていくと明き止まりにぶつかります。 ファスナー付けの縫い目と明き止まりから下の縫い目が真っ直ぐ繋がるようにします。 直前で無理矢理繋げようとした直線と最初から真っ直ぐに繋げようとした直線では直線の質が違います。 ファスナー付けは早い段階から明き止まり下の縫い目に繋げる事を意識するといいかと思います。
縫い止まりから下を割りアイロンかける時にほんの少し止まりから上の縫ってない所も割りアイロンしておくとその折り目がファスナー付けの目安に出来ます。
< この時考えていること >
ファスナー付けでミシンの針が落ちている所と縫い止まり下の縫い目に対しての直線を心の目でイメージし生地を置きます。
そのイメージした直線に重なるようにファスナーを重ね、真っ直ぐ明き止まりまで縫うことです。
ファスナーを真っ直ぐにするのではなく生地を真っ直ぐにして、そこに真っ直ぐファスナー乗せるということです。
裏から見てみましょう。直線で繋がっていれば成功です。
下からのファスナー付け
下から上に行く時も同様に縫い目を真っ直ぐつながる様にしたいですが、 ファスナーのムシが邪魔して縫い始まりの位置は決めづらいです。 なので仮止めを入れます。ファスナーを閉じた状態で明き止まり付近の帯を縫い代に仮止めします。
< この時考えていること >
明き止まりでツレたり余りが出ないようにすること、ファスナーが閉じた状態でムシの中心が縫い目に沿う位置に重ねること、
仮止めミシンを入れる直前も再度ファスナーをめくり明き止まりにツレや余りがないか確認することです。
仮止めが終わったら、表から違和感がないか確認します。 明き止まりがツレてたりエクボになっていたら仮止めをやりなおしましょう。 仮止めをほどくのはファスナー付けをほどくよりも遥かに簡単です。 これでファスナー付けをする前にファスナー付けを想定した確認が出来ます。
確認ができましたらスライダーを仮止めの間を通して下ろします。
いよいよ逆側のファスナー付けです。 仮止めができているので片押さえを思い切り押し込んで縫い始めましょう。
< この時考えていること >
明き止まりから下の縫い目に真っ直ぐ繋げることと、
縫い始めが歪まないようにキープしながら縫い始めの部分だけでなくその先の縫う直線もイメージすることです。
上からのファスナー付けと同様に縫い進めます
< この時考えていること >
縫い代巾も大切ですが押さえ左側の地の目を意識します。
縫い代巾を無理に合わせたりはしません。今回はタックの縫い目をしっかりまっすぐになるようにしましょう。
そして表地がイサらないようにすること。
完成
ファスナー付けが終わりましたらまず、止まりの部分を馴染ませるアイロンを裏から左右共にかけます。 多少の歪みならこのアイロンで馴染ませることができます。
さらに止まりだけでなくファスナー付けの縫い代を上から下まで押さえておくと尚良いかと思います。 最後に表から優しくなでる様にアイロンして完成です。 当たりが出たら裏から縫い代を起こしてアイロンして消しましょう。
左右のタック線も歪みなく入っています。ファスナー下端も包んでおきましょう。
ファスナー周りの縫い代処理は色々な方法があります。 ファスナーの帯を縫い代に止めるのは、私はあまりお勧めしませんが、次の画像の様にガチガチにパイピングしてしまう仕様もあります。
パイピングをするとファスナー周りもスッキリします。 ですが、縫い代が硬くなりますので詰まりが発生しやすく、とても注意が必要になります。 出来るだけ縫い代は硬くならないで自然な状態で存在するのが表への影響を少なく出来ます。
ファスナー押さえについて
今回は使いませんでしたが、おすすめの押さえを紹介します。
こちらの押さえは針が落ちる所に邪魔がなくスッキリしているのでファスナー付けを下からするときにもとてもいいです。 片押さえと違いムシも起こしてくれます。
終わりに
コンシールファスナーというのは縫製をする人達全ての方達に平等に使われる仕様です。 趣味でやられてる方や服飾学生でも付けたことがあるでしょう、 何百枚、何千枚もある大ロットの量産でも使われるし、何十万円もするワンピースの後ろ中心にだって付けられています。 価格帯を問わず、経験値を問わず使われている仕様です。コンシールファスナーはいつだって誰にだって平等なのです。 ネットでも色々なやり方が紹介されています。誰にでも勉強することもできます。 一つやり方を覚えてしまえば大体大丈夫でしょう。 ですが付けてる途中に考えることは毎回一緒というわけには行きません。 生地、付ける位置、ファスナー周りの仕様、地の目、などなど条件が変われば優先することも変わります。 大事なのはその状況に合わせてベストの思考で取り組むことです。