送り歯の機能性
左右の送り歯、長さが違うことの意味
はじめに
ミシンは押さえと送り歯で生地を挟み、 送り歯のギザギザが生地を手前から奥に動かしてくれます。 実はその送り歯にもそこそこ種類があります。 今回は一般的な本縫いミシンの送り歯の話になります。
送り歯の種類
縫製をしてる人であれば、ほぼ毎日視界に入っていると思いますが、 この送り歯は左右で、長さが違います。 ご存知の方もいれば、言われてみればと思う方もいるかと思います。
左の方が長く、右の方が短いです。 つまり左の方がつかみが強くしっかり送れて、 右の方はつかみと送りは左よりも弱いということです。 まるで左の方がお利口さんみたいな言い方になってしまいましたが、 逆を言えば左はつかみと送りが強いのでいさりやすく、 右はその逆でいさりにくいということでもあります。 今度は右の方がお利口さんになりました。 これで右も左も仲良くやれることでしょう。
送り歯の機能性
それでは本題に入ります。 左右の長さが違うことで生地の運びに小回りが効きます。 特にカーブの時にはとても重要です。 例えば両方長いとつかみは強くなります。 直線で平な部分専用のミシンであればそちらの方がいいかもしれません。
実はこの送り歯の長さが左右で違かかろうと、一緒だろうと、 送り歯は常に左右両方が機能しているわけではないのです。 縫製箇所によりその機能は失われているのです。
上の画像のように、生地が押さえ巾に合っている場合は左右の送り歯は機能しています。
上の画像のようなコバ押さえの時は右の送り歯は機能していません。 押さえを上げた状態の画像を見ると、 生地が右の送り歯に届いていないので、右の送り歯は押さえに対してひたすら空回りしています。 左の送りのみで送っているので、全体的な送りの力は弱まっています。 送りが弱いということは、縫い目が細かくなりやすいです。 縫い手の方は生地の送りの意識を変えた方がいいということになります。
送り歯の左右の厚みによる違い
ミシンをかける際、押さえの左右の厚みが違うことは多々あります。 左右で厚みが違う場合、厚みのある側が押さえの圧力を強く受けて、送り歯が効きやすくなります。 逆に厚みのない側は送りが甘くなります。 押さえの左右で厚みが違う場合はどのように機能出来ているかを見てみましょう。
左側の送り歯のほうが長く送りが強いので, 上の画像のように左側に生地の厚みがある時はしっかりと送ってくれます。 もちろん、下の生地だけが動いてしまい上側の生地が縫いずれることもありますので, 上側の生地が余らないように注意は必要です。 右側は生地一枚になりますので送るというよりも、 左を支える程度の送りになるかと思います。 なんにせよ比較的安定して縫える条件下かと思います、
左右逆の厚みも見てみましょう。
このような場合右側が厚みが出ているので、送り歯の短い右側がメインで生地を送ることになります。 右の送り歯は短いので送りが甘くなるので安定性がよろしくありません。 安定力のある左の送り歯は厚みがなく、ほぼ浮いてしまっているたった1枚の生地を一生懸命送りますが、 はっきり言って機能しているとは言い難い状況になります。 結果ステッチは蛇行しやすく針目も細かくなってしまう危険性があります。 対応策は、多々あるかと思いますが、 この場合で言えば、右手の人差し指と親指で右のパイピングを挟み、 その親指は生地を少し手前側に引くのを意識します。 左手は親指を開き押さえの横か少し手前らへんを支え、 人差し指は押さえ奥のパイピングに乗せて奥に促し、 残りの指は左側の生地を広く支えながら送りに合わせて奥に促す。 右手でパイピングの縫いづれを防ぐことが大事ではありますが、 この状況では左手の支えが安定できるかでステッチの運びが圧倒的に安定します。
終わりに
仕様の違いや押さえの都合で送り歯がどのように機能しているかは全く違います。 誤解しては欲しくないのですが 必ず左の送り歯をメインで縫える向きで縫わなければならないというわけではありません。 そんな事したら場合によっては効率を悪くしてしまうこともあるはずです。
縫製をしていれば『この向きなんか縫いづらいと』思うこともあったはずです。 それにはちゃんと理由があるのですが、その向きで縫ってはダメというわけではないのです。 縫いづらい理由を理解して、それを意識して作業をすることが大事なのです。 ただ『縫いづらいんだよな』という意識だけでは足りないのです。 理解して意識する、そうすることで対応するためのアイデアが生まれるのです。