玉縁ホールの裏側
初めに
玉縁ホールは、その手間の多さから難易度の高い仕様と思われていたりオーダー感や高級感のイメージがあるかもしれません。 通常では敬遠される仕様です。その理由に上げられるのがホール裏側の始末です。 その作業に安心感を与えるアイデアを紹介します。 今回は2パターン紹介します。
ホール表側を作る
まず一つ目です。表側の作り方はポケットと同じなので説明はしませんが、少しだけお話ししておきます。 ホール裏側をまつる時に口布の付け線のミシン目が見えてしまうとカッコ悪いので隠すようにまつるわけですが、 その縫い目はそもそも控えてあれば尚いいかと思います。 下の画像を見ていただけるとわかるかと思いますが、この横のミシン目は口布を縫い代に止めているだけなので止まってさえ入れば多少控えてあっても何の問題もありません。 誤解のないように付け加えておきますが、この多少控えるの多少とは0.5ミリ〜1ミリ程度の話です。 縦のミシン目は切り込みで出来た三角布をしっかり押さえたいので控えずにピッタにリステッチを入れます。
それと口布の付け線の縫い代を割るか片倒すかで印象が変わります。 仕様としてはどちらでも正解で生地によって変えることもありますが、好みでいいと思います。 割ると平に、片倒すと凹凸感がでます。それだけの違いでそれ以上でも以下でもないと思います。
上の画像は割っています。
ホール裏側を芯で縫い返す
見返し側のホール位置を芯で縫い返します。 ホールの大きさに合わせて縫いますがほんの少し小さめにするといいです。 ほんの少しとは0.5ミリほどの話です。 なぜかというと芯が表に見えてしまわないように多少控える為に裏側に引っ張ることで穴が大きくなってしまうからです。
中縫いの返し針は画像のように、直線の位置でした方が角がスッキリします。 それでは切り込みを入れていきましょう。
まずは縫い代のみに接着して返してから全体を貼っていきます。
貼る前に必ず表から芯が覗かないように確認をしてください。 違う色の芯がはみ出るとカッコ悪いです。 接着してしまうと剥がすのが大変です。芯は表地の色と完全に合うのは白と黒ぐらいです。
芯を貼り固定したらその位置を確認しながら前端を縫います。 ここまで来ると合印よりもホールの位置を優先して中縫いをしましょう。 この時前端の控え分を意識、確認しておくと、後で後悔しないですみます。
中縫いを入れたら、前端を開いて見てみましょう
控え分も確認して中縫いをすればホール位置もピッタリ合わせることができます。
あとはまつるだけです。ミシン目も控えてあるし位置も合わせてあるのでほつれる心配をせずにまつることができます。
ホール裏側に縫い目を作る
今回紹介するもう一つのやり方は、ホール位置の見返し側に切り替えを作ってしまう方法です。 デザイン的に許されるなら是非オススメのとても簡単な方法です。 中縫いする時は必ず縫い目とホールの位置を確認します。
位置の確認をしっかりして前端の中縫いを入れます。先ほどと一緒で縦の位置だけではなく横の位置も控え分量を想定して合わせていきましょう。 もう説明もいらないかと思いますが、前端を開いた状態で確認してみます。
表側からは玉縁ホールで裏側からは縫い目利用ホールとなります。 このやり方はデメリットがわかりやすいです。 縫い目の縫い代のせいでゴロ付くことになります。ホールの数と同じだけ切り替えが必要になってしまいます。 玉縁ホールの作りやすさはありますがパーツが増える分裁断や縫製にもデミリットは存在します。 あくまでも生地とデザインに対してこの仕様が必要なのかどうかが重要になります。
終わりに
玉縁ホールの口布は小さいですが、ただそれだけです。ポケットと同じです。 いつも通りやれば問題ありません。大事なのは裏の始末なのです。 今回のやり方はその大事な裏側の始末をリラックスしてやるための方法ということになります。 先に見返し側の穴を作ってしまうことで『その穴がズレてしまったらどうしよう』とか考えてしまうかもしれませんが、そんな心配は入りません。 なぜなら合わせればいいだけだからです。 仮に通常のやり方でホールが出来てから見返し側の切り込みを入れたとしても多少ズレることだってありますし、切り込みを入れ過ぎてしまうこともあります。 正確に作って出来たもの同士を合わせる方が遥かにわかりやすいです。 何より見返しが本体と縫い合わさる前にホール裏の作業が終えられるのもありがたいものです。
玉縁ホールの仕様はザクザクした生地で使われることが多いです。 どんなに慎重に切り込みを入れて折り込んでまつっても生地が抜けてきてしまうこともあり、『これはまつれているのだろうか』などと不安になります。 そんな時は絶対に今回の方法をオススメ致します。
ホール表側は大体両玉縁になりますが、片玉縁でも私はいいかと思います。 何度か片玉縁でのホールを見たことがありますが、逆に「ん?」と興味を惹かせることができますし面白味はあると思います。