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袋縫いの脇線に
縫い目利用の
ポケットを
作る2

初めに

このページは袋縫いの縫い目利用ポケットシリーズの2回目になります。 まだご覧になっていない方は、シリーズ1回目の袋縫い始末で縫い目利用ポケットを作る1 を先に見ていただけると、今回の紹介する仕様との違いに面白みがあるかと思います。

前回は手前袋布と身頃の接ぎ部分は袋縫いにせずに縫い代を出して、ロックする方法を紹介しました。 今回はその部分も袋縫いにする方法です。前回以上に通常の縫い目利用ポケットの簡易性は果てしなく失われています。

今回は先に流れを紹介します。

袋布周囲の中縫い

袋布を見頃に付ける

脇線の中縫い

ポケット口の袋縫い

脇線の袋縫い

袋布周囲のステッチ

シンプルですが、とても厄介な仕様でやりがいがあります。

パターン

パターンは基本的にロック始末の時のポケットのパターンと同じです。

袋布のパターン

今回は縫い代が前高になり、この仕様では後ろ高にすることが出来なくなります。 最後まで見ていただければその理由はしっかり理解できるかと思います。

袋布周囲の中縫い

身頃につける前に袋布周囲の中縫いを入れます。 ここで注意は脇側まで縫い切らずに2センチほど手前で中縫いを止めておきます。

< 中縫い >

袋布中縫い

< 縫い返し >

袋布縫い返し

矢印の部分は中縫いをしません。

< 下 >

袋布縫ってない部分のアップ下

< 上 >

袋布縫ってない部分のアップ上

中縫いをしていない箇所はアイロンで二つ折りにしておきます。

縫い切ってしまうと前後別々に身頃につけられなくなってしまうためです。 最終的にはこの部分はコバステッチと袋縫いのステッチで止めることになります。

袋布を身頃に付ける

袋布が出来上がりましたら、前後身頃にそれぞれ中縫いします。 袋布脇側の縫い残した部分の二つ折りにしている部分は折った状態のままで接いでください。

< 表から >

袋布と身頃の接ぎ

< 裏から >

袋布と身頃の接ぎ裏側

ポケット口の位置は無視して矢印のように、 袋布を上から下まで中縫いします。 糸印はポケット口の位置です。

ポケット口の位置を通り超えて袋布を上から下まで袋縫いの1回目の中縫いをして身頃と接ぎ合わせます。 前後見頃は袋布でつながっている状態で前後身頃同士はつながってはいません。

脇線を縫う

袋布がついていない部分(袋布から上と下)の脇線を前後接ぎ合わせます。 袋縫いの1回目の中縫いになります。

< 脇線の中縫い >

袋布以外の脇線を前後接ぐ

矢印の部分が袋布のない部分で中縫いを入れる箇所になります。

脇線を接ぐのはポケット口までではなく袋布から下と袋布から上になります。 縫いましたらアイロンで毛抜き合わせにしておきましょう。

< 脇線とポケット口のアイロン >

脇線とポケット口のアイロン

袋縫いの中縫い後はノッチが見えなくなります。 ポケット口の位置に糸で印を入れています。 裏側から見た画像です。

袋布と身頃の接ぎを袋縫いする

袋布と身頃が接いである部分に袋縫いのステッチを入れます。 ここで注意がありますので写真を見てください

< ポケット口の袋縫い >

ポケット口の袋縫い

< ポケット口の袋縫いアップ >

ポケット口の袋縫いアップ

縫い目に沿って矢印を入れています。 真っ直ぐ縫うのではなく矢印のように縫います

前は前、後ろは後ろで別々に袋縫いのステッチを入れます。 袋布端からステッチを始めてますがポケット口までは通常の0.5cのステッチではなく0.3c程で縫い始め、 ポケット口の位置で斜めに入れて0.5cで縫います。 これはこの後に脇線を縫う際に表側に縫い目が出ないようにする為とゴロゴロと厚みを出さない為です。 縫い終わりましたらアイロンで縫い代を前高に押さえます。 特にポケット口上下から袋布上下端の0.3cで控えてステッチした部分はキセがかからないように しっかりと袋布側へ引っ張ってアイロンしましょう。 ここで引っ張りが不充分だとせっかく控えたステッチした意味がなくなってしまいます。

脇線の袋縫い

袋布の部分は袋縫いが完成している状態になっています。次はポケット口まで脇線を中縫いします。

< 脇線をポケット口まで中縫い上 >

脇線をポケット口まで中縫い上

< 脇線をポケット口まで中縫い下 >

脇線をポケット口まで中縫い下

ポケット口止まりまで脇線を縫います。 0.3cで控えて縫った縫い目と重ならないように 矢印のように真っ直ぐに縫います。

ポケット口から袋布上下端の部分(0.3cで控えて縫った部分)は袋布とはつながっていますが、 前後身頃同士はくっついてはいません。そのせいでピッタリ合わせづらいです。ここが非常に厄介な部分です。 脇線からつなげてポケット口止まりまで前後の身頃をぶち抜きで行います。 ステッチの際、見える側(押さえ側)の縫い代巾は問題ありませんが 裏側(送り歯側)になる方は隠れて見えなくなりますので、 縫い止める場合も、縫い始める場合も、しっかりとポケット口の上がり位置を合わさなければなりません。 針を下ろす時は必ず見える側(押さえ側)の上り位置と裏側(送り歯側)の上がり位置をピッタリ合わせます。 針を上げ下げして確認して下さい。この部分は下の注意点でも再度お話しします。

次はアイロンで前高に押さえます。 袋布側に自然に縫い代が倒れることになるので、自然と前高になります。 ここまでくれば縫い代が前高になる理由がわかるかと思います。 無理矢理、後ろ高にすることもできますが、 ポケット口上下のおさまりが非常に悪くなりますのでおすすめはいたしません。

袋布周囲のステッチ

袋布周囲のステッチをぐるり入れます。 最初に縫い残しておいた中縫いが入っていない部分は二つ折りにしているだけなので、 この部分はコバ+0.5cステッチにしましょう。 脇線の縫い代ごとぶち抜きで入れればより安定するかと思いますが、 この部分は袋縫いが2個重なっています。 押さえを下ろすと厚みで生地が傾きやすいです。 変な傾きでステッチを入れてしまわないように注意しましょう。 続けて一緒に袋布周囲をステッチで押さえたら完成となります。

< 袋布周囲のステッチ1 >

袋布周囲のステッチ

< 袋布周囲のステッチ2 >

袋布周囲のステッチ

< 完成表から >

完成表から

< 完成ポケット口 >

完成ポケット口に定規を指してる

ポケット感がわからないので定規を指してみました。 ちゃんとポケットがあります。

< 裏側、向こう袋布 >

完成裏から

< 裏側、手前袋布 >

完成裏から手前袋布をめくった画像

裏から見ても袋縫いに袋布が流し込まれているので、 非常にスッキリしています。 前回のシリーズでロックをかけた手前袋布との接ぎ目も袋縫いされています。

注意点

今回紹介したやり方で、注意すべきところは一つです。 ポケット口の袋縫いを終えた後に脇からの袋縫いのステッチを真っ直ぐポケット口止まりまでつなげることです。 ここが綺麗な真っ直ぐでつながらないと表から見た時も、もちろん真っ直ぐな縫い目ではなくなってしまいます。 ミシンは基本一定方向で縫いますのでポケット口に向かう縫いと ポケット口から始める縫いの2パターンになりますが、 どちらにせよ、前後の見頃のポケット口をピッタリ合わせて縫わなければなりません。 ですが袋縫いの縫い代が重なりますので非常にゴロ付いて不安定になります。 押さえ側は見えるので綺麗に繋げられますが裏側(送り歯側)は見えないので、 実際にめくって確認することと、袋縫いの縫い代の厚みをピッタリ重ねるなどして合わせるしかありません。

< 押さえ側のポケット口止まり >

ポケット口止まり押さえ側

< 送り歯側のポケット口止まり >

ポケット口止まり送り歯側

送り歯側は生地をめくってポケット口の縫い線と つながりがいいか確認します。 ピッタリとポケット口止まりで縫い止めます。

終わりに

今回の仕様は全ての縫い目を袋縫いにすることができますので、 手前袋布をめくっても裁ち端が見えないです。 完全に生地の裁ち端を隠す事が出来るので、かなりスッキリした仕上がりになります。 前回の仕様に比べて縫い代に切り込みを入れたりしないので補強芯を貼る必要もなく、 芯が見えてしまえこともありません。 透けてしまうような生地でもしっかりと袋縫いされているので透けてもスッキリしています。 ここら辺は大きなメリットかと思います。

逆にデメリットはポケット口含め袋布がある部分は前後別々に袋縫いをするので 縫い代の厚みがかなり出てしまいます。 そして縫い代は前高にしか倒せなくなってしまいます。 それ以上に最大のデメリットは作るのがめんどくさい、ということかもしれません。

画像と文だけでは分かりづらい部分が多かったかもしれませんが、 実際に部分縫いをしてもらえれば理解できると思います。 裏から見た時のスッキリとした仕上がりは手間をかけたかいがあるかと思います。 これだけ手間をかけて作りますので見積もりも慎重に出すようにしましょう。

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