縫い目利用ポケットを作る
初めに
縫い目利用ポケット、英語にするとシームポケット。 この定番の仕様を出来るだけマニアックに説明して面白味が出ればいいなと思います。
向こう袋布を付ける
↓
脇線を縫う
↓
手前袋布をつける
↓
ステッチを入れる
↓
袋布周囲を縫う
↓
完成
ざっとこんな感じの順番です。脇線とポケット口のつながりを大事にしたいので、まずは向こう袋布を付けてしまいます。 仮に違う順番で作ってもこのポケットは作れます。大事なところを意識しやすくするためにこの順番で紹介するだけです。 大事なことはどの部分に重きをおいて作業するべきかという事になります。
先によくない例を画像で二つ紹介しておきます。
今回紹介するやり方はこの2点に重点をおいて説明しています。
伸び止め
ポケット口の前側に伸び止めを貼ります。 早速マニアックにいきますので伸び止め端は丸くカットして剥がれにくくしましょう。 ポケット口のテープは伸び防止というよりも、補強としての役割が強いので剥がれないことが重要です。 今回の生地は表側に透けるというほどではないのですがテープを貼った部分が若干濃くなるというマニアックな生地です。 表側から貼ってる感がわからないように、ピッタリ上がり位置にテープ端が合うように貼ります。 表から見える部分には、はみ出さないようにするということです。 上がり位置ピッタリに真っ直ぐに貼っておくと後でポケット口の折り目の歪みが防げます。これは後ほど説明します。
向こう布を付ける
後ろ見頃に向こう袋布を付けます。ここを先に縫い合わせるのはポケット口と脇線のつながりがとても重要だからです。 ここのつながりが悪いとポケット口上下の位置で歪みが発生して雰囲気が圧倒的に悪くなります。糸が同色なのでわかりづらいです、拡大して見ていただけるとわかりやすくなるかと思います。
脇線を縫う
向こう袋布を付けましたら脇線を縫います。この時は後ろ見頃側を上にして縫います。 これは向こう袋布とのミシン目を見て自然につながるように意識する為です。 この為に向こう袋布を先に付けました。 もしも脇線を縫ってから向こう袋布を付けるようとするとポケット口を開きながら縫うことになり窮屈になってしまい、 結果縫い目が自然なつながりでなくなってしまいます。 向こう袋布は下の画像のようにたたんでおけば脇線を縫う時も邪魔にはなりません。 ですが手前袋布も付いた状態だと流石に邪魔になりますし、手前袋布付けのミシン目を見ることが出来ないので縫い目との繋がりに歪みが出るかもしれません。あくまでも先に付けるのは向こう袋布のみです。 この部分は縫い目利用ポケットで1番大事な所です。
脇線が縫えましたので、縫い目を確認してください。自然なラインで繋がっているでしょうか。 ポケット口のところでガクンと曲がっていたり歪みはないでしょうか。 後ろ見頃側を見て縫いたいので左右で縫う向きは逆になります。 画像では左脇を塗っていますので、右脇を縫う時は裾から縫う事になります。 縫い目が確認出来ましたら袋布を裏側に出しましょう。
手前袋布を付ける
手前袋布を付ける位置は少し控えます。吹き出さないようにする為です。 今回は脇線の縫い代を1.2c付けているので0.2cの控えを作るために1cで縫いましょう。 控えがあるということは、縫い目が表側に見えないという事になります。 折り目さえしっかり折れていれば、多少縫い目が歪んでも表面には関係なくなります。 袋布周囲が袋縫いの場合は身頃ポケット口と手前袋布の脇線を別々に先にロックをかけなければなりませんが、 今回は、周囲ロックなので先にかけても後からかけてもどちらでも構いません。
手前袋布がつきましたのでポケット口前側の縫い目を見ながら説明をしていきます。 下の画像を見てください。できるならば拡大してください。 伸び止めを貼るときに後ほど説明するとお話しした部分になります。 ポケット口上がり位置に合わせて伸び止め端がくるようにしてありますので伸び止めに沿って自然と折り目がつけられるはずです。 手前袋布の縫い目は0.2c伸び止めに乗っていますのでテープも縫い目で固定できます。 この折り目がポケット口となりますので歪んだりすると台無しになります。 この部分は縫い目利用ポケットで2番目に大事な所です。 ステッチを入れる前に必ず表面を確認します。
縫い目の確認をしましたらアイロンをします。 ミシンをかけた後は生地に何かしらの変化があります。アイロンで馴染ませるというのは必ず行う工程です。
ポケット口をアイロンで整えたら、前側にステッチを入れておきます。 ステッチの時は向こう袋布を噛まないようにしっかりと外しましょう。
袋布周囲を縫う
手前袋布と向こう袋布のズレを確認します。相手は布なので多少の動きやズレは出て然るべきです。 そしてこのズレをそのままに止めてしまうとポケット口に影響します。 手前袋布が大きければポケット口が後ろ見頃に重なってしまいます。 逆に小さければポケット口が開いてしまいます。 通常のポケットであれば袋布はピッタリにしたほうがポケット口が縫い目にピッタリ収まります。 表からぶち抜きで裏までマチ針、もしくは粗ミシンで仮止めします。下の画像ではマチ針で仮止めしています。 ポケット口が縫い目に対して収まってるか、隙間が空いていないかを必ず確認して下さい。
この状態で袋布を見てみます。上の画像のように裁ち端が合っていない部分を切り揃えてから周囲を縫いましょう。 面倒であれば周囲を縫ってからロックで切り落としても構いません。 周囲は必ず二条縫いしましょう。二条縫いとは並行に2本縫うことです。袋布は丁寧に扱われる箇所ではありません。強度はしっかりと意識しましょう。
ポケット周囲のロックの後は必ずアイロンです。袋布が波打ったままでは収まりに影響します。
周囲のロックを終えたら、見頃脇線から袋布の脇線も一束にしてロックをかけましょう。 今回は後ろ高にしたいので前ポケット口の縫い代は斜めに折り込んでそのままロックをかけましょう。 切り込みを入れる方法もありますが、今回はほつれやすい生地なので斜めに折り込む事にします。 この部分の判断は生地や厚みや透けや縫い代始末や・・などなどの状況で判断します。 下の画像では斜めに折こみロックをかける方法の紹介になります。 ロックには表裏がありますので左右の脇線でかける方向は変わることになります。
カンヌキを入れる
必ず入れなければならないものではなりませんが、あるかないかでは強度は全くの別物です。 ポケット口端に2〜3針の返針を向こう袋布までぶち抜きましょう。 針半目ほど後ろ見頃に乗るのが良いかと思います。
完成
完成です。縫い目利用ポケットは縫い目のように見せることが大事です。 今回の商品はポケットすぐ近くに縦にピンタックが入っていますが、ポケットには関係ありません。
終わりに
縫い目利用ポケットは、デザイン上ポケットの存在を表に出したくない時に使用される仕様です。 そのことからポケットの存在をいかに消して、ただの縫い目と思わせることができるかが重要です。 以上のことから大事なことは2点挙げられます。 一つは縫い目線がポケット口で歪まずに自然なラインになること、これは向こう布を先に付け脇線との繋がりを意識することで対応します。 二つ目はポケット口が開かないこと、これは袋布周囲の縫いの前に袋布の形状を合わせることで対応します。 長く説明しましたが大事なのはこの2点だけです。デザインや縫い代始末の違いでやり方はいくらでも変わりますが、この2点を必ず押さえておけばなんの問題もありません。